認知症と診断されても、住み慣れた自宅で暮らし続けたいと考える人は多いです。さらに認知症の進行度や生活環境によって状況は大きく変わるものです。そこで本記事では、一人暮らしが可能なケースや実際に起こりやすいリスク、事前にできる対策についてわかりやすくご紹介します。
認知症でも一人暮らしはできる？状況別紹介と現実
認知症と診断されても、今の暮らしを続けたいと考える人は少なくありません。しかし、一人暮らしができるかどうかは認知症の進行具合や生活の状況によって大きく変わります。軽度の認知症なら一人暮らしが続けられる場合もある
認知症を発症していても、初期や軽度の段階であれば一人で生活を続けられる場合があります。物忘れが増えたり、新しいことを覚えるのが難しくなったりすることはあっても、身の回りのことは自分でできる人も多いからです。買い物や料理、掃除などの家事がある程度行えて、生活リズムが保たれている場合は、一人暮らしを続けられる場合もあります。ただし、事故やトラブルの危険が高まるため、本人の状態を慎重に見極める必要があります。
中期以降は日常生活に支障が出て一人暮らしが困難
認知症が中期・末期に進行すると、一人暮らしが難しくなるケースが多くなります。理由は、生活に必要な基本的な行動が一人ではできなくなるためです。また、妄想や興奮といった症状が現れ、周囲とトラブルになるケースもあります。進行すると歩行や排せつ、食事といった日常の基本的な動作にも介助が必要となります。この段階になると、一人で安全に暮らすことは非常に困難といえるでしょう。
増え続ける「認知症で一人暮らし」の現実
認知症と診断されても一人暮らしを続けている高齢者は、年々増加しています。背景には核家族化の進行や高齢化の加速、家族と離れて暮らすケースの増加などがあります。また、認知症でなくても、一人で老後を迎える人も少なくありません。本人の意思と安全の両面を考えながら、一人暮らしを続けるかどうかを判断していく必要があります。
認知症の高齢者が一人暮らしで抱える主なリスクとは
認知症の高齢者が一人で暮らし続ける場合、さまざまな危険が隠れていることがあります。ここでは、認知症の一人暮らしで起こりやすい具体的なリスクについて紹介します。家庭内事故や周囲とのトラブルにつながる危険
認知症の高齢者が一人で暮らす場合、火の消し忘れやガスの締め忘れなどによる火災の危険が高まります。料理をしている途中で別のことに気を取られてしまい、コンロをつけたまま忘れてしまうケースは少なくありません。また、水道を出しっぱなしにしてしまい、階下への水漏れなど大きな被害につながることもあります。さらに、判断力の低下から近所との約束を忘れたり誤解が生じたりし、近隣とのトラブルに発展するケースも確認されています。
健康管理ができず体調を崩すリスク
認知症が進行すると、薬を正しく飲むことが難しくなる場合があります。飲み忘れや二重に飲んでしまうこともあり、持病が悪化したり副作用を起こしたりする危険があるでしょう。また、食事の準備がおっくうになったり、同じものばかり食べてしまうことで栄養が偏ることもあります。さらに食事を摂ること自体を忘れてしまい、低栄養や脱水を招くことも少なくありません。
社会的な危険や事故に巻き込まれる可能性
認知症の高齢者は判断力が低下することで、詐欺や悪徳商法の標的になりやすくなります。強引なセールスを断れなかったり、不必要な契約をしてしまったりする被害が実際に増えています。また、外出した際に道がわからなくなり、自宅に戻れなくなるケースも近年増加傾向です。とくに日常的に外出する習慣がある人は、徘徊によって行方不明になる危険が高いといわれています。
認知症で一人暮らしになる前に準備しておきたい大切な対策
認知症は誰にでも起こりうる身近な病気です。発症してから慌てないためにも、元気なうちから準備しておくことが安心につながります。家族と早めに話し合い情報を共有しておく
離れて暮らす家族がいる場合は、認知症の心配が出てきた段階で早めに現状を伝え、今後について話し合っておくことが大切です。生活で不安に感じていること、どんな暮らしを望んでいるかなどを話し合っておくことで、将来の選択肢が整理しやすくなります。事前に気持ちを伝えておくことは、お互いの不安を軽くすることにもつながります。
早い段階で施設入居も検討しておく
認知症の不安がある場合、早い段階から介護施設の利用を考えておくことも選択肢のひとつです。老人ホームやグループホームなどの施設は、認知症に対応した環境が整っているところが多く、専門スタッフによる見守りが受けられます。また、集団生活によって人との交流が生まれ、孤立や閉じこもりを防ぐ効果も期待できるでしょう。
利用できる支援サービスを事前に確認しておく
一人暮らしを続けるかどうかに関わらず、公的な支援サービスについて事前に知っておくことは重要です。介護保険を利用すれば、掃除や買い物を手伝ってくれる訪問介護、健康状態を確認してくれる訪問看護などのサービスを利用できます。また、身元保証会社の存在も知っておくと安心です。身元保証会社は、施設入居や入院手続きの保証人を引き受けたり、万が一のときの支援を行ったりします。家族に負担をかけたくない場合や身寄りが少ない人にとって頼れる存在となるでしょう。
