近年は単身世帯の増加や家族関係の希薄化により、身寄りがない状態で最期を迎える人が増えています。この問題は特別な人だけの問題ではなく、誰にでも関わる身近な課題です。そこで本記事では、身寄りのない人の死後に起こることや現状、安心して暮らすための備えについて紹介します。
身寄りがない人の死後に起こること
身寄りのない人が亡くなった場合、葬儀や遺骨の管理、財産の扱いなどはどうなるのか気になる方も多いでしょう。ここでは、身寄りのない人が死亡したときに実際に行われる対応について紹介します。身寄りのない人の葬儀は自治体が行う
身寄りのない人が亡くなり、親族や知人が葬儀を行えない場合は、遺体が見つかった場所を管轄する市区町村が対応します。自治体が最低限の葬送として火葬を行い、一定期間は遺族や知人からの引き取りを待ちますが、申し出がなければ自治体が管理する「無縁納骨堂」などへ納められます。一般的な葬儀のように儀式は行われず、簡素な形式になることが特徴です。
相続人がいない場合の財産は国のものになる
亡くなった人に相続人が確認できない場合、残った財産は最終的に国庫へ引き渡されます。現金や預金だけでなく、不動産や家財道具なども含まれます。価値がなく引き取り手がないものは破棄されます。
身寄りのない人の死の実態
具体的にどのくらいの人が身寄りなく亡くなっているのか、どのような現状があるのかを知ることは大切です。ここでは、身寄りのない人の死に関する統計と社会の現状について紹介します。身寄りのない人の死亡者数は年々増加している
総務省行政評価局が公表した「遺留金等に関する実態調査 結果報告書」によると、2018年から2021年までの約3年半の間に、身寄りのない人として扱われた死亡者数は約10万件にのぼると報告されています。高齢化の進行や単身世帯の増加により、こうしたケースは都市部だけでなく地方でも増えており、今後もさらに増加が見込まれています。身寄りのない人の死は、もはや特別なケースではなく社会全体で無視できない問題となっています。
引き取り手のない遺骨は全国で増え続けている
身寄りのない人の増加にともない、遺骨の引き取り手が見つからない「無縁遺骨」も増加しています。総務省が2021年に行った調査によると、全国の自治体に保管されている無縁遺骨は約6万体に達していることが明らかになりました。このような遺骨の増加は自治体にとって大きな負担となっており、保管場所の確保や管理費用が課題となっています。
身寄りのない人の死は本人だけでなく周囲にも影響する
身寄りのない人が亡くなった場合、本人に関する問題だけでなく周囲にもさまざまな影響が生じます。たとえば、葬儀や納骨が本人の希望どおりに行われないことや遺品整理が進まず住まいが放置されるケースがあります。さらに、賃貸住宅で亡くなった場合は孤独死となることが多く、発見が遅れることで異臭や部屋の損傷が発生し、貸主や周囲の住民に影響が広がることも少なくありません。こうした背景から、身寄りのない人の死は社会全体にとっても大きな課題です。
一人でも安心して暮らすための生前対策
身寄りのない人が将来のことを考えると、不安を感じる場面は少なくありません。ここでは、一人暮らしの方や親族とのつながりが薄い方でも安心できる生前対策について紹介します。自分の意思を形にするために遺言書を作成する
身寄りのない人が生前に行っておきたい大切な準備のひとつが、遺言書を作ることです。遺言書がないまま亡くなると、相続人がいない場合、財産は最終的に国庫へ引き渡されます。しかし遺言書があれば、自分の財産を寄付したり、親しい友人やお世話になった人へ託したりと、自分の意思に沿った形で残すことが可能です。公正証書遺言にしておくことで偽造や紛失の心配もなく、確実に内容が実行されます。
将来の不安を少しでも軽くするためには、遺言書の準備が役立ちます。
葬儀会社に相談しておくと死後の不安を減らせる
身寄りのない人の場合、亡くなった後の葬儀や納骨を誰が行うのかという問題が発生します。そこで、生前に葬儀会社へ相談し、希望する葬儀の内容や費用について取り決めておけば、死後の手続きがスムーズに進みます。事前相談では葬儀の規模や形式、遺影や遺影写真の準備も可能です。生前契約を結ぶことで、自分の希望に沿った形で見送ってもらえるだけでなく、公的機関に頼る必要がなくなるため、安心できる備えになります。
また、費用の支払い方法を決めておくことで、周囲に負担をかけずに済むというメリットもあります。
死後事務委任契約と身元保証サービスで安心を確保する
身寄りのない人がとくに準備しておきたいのが、死後の手続きや生活面を支える契約です。亡くなった後の役所への届け出や公共料金の解約、家の片付けなどを任せるには「死後事務委任契約」があります。この契約を結ぶことで、信頼できる第三者へ事務手続きや身の回りの整理を任せることが可能です。また、近年は身元保証会社が提供する終活サービスも広がっています。
身元保証会社は病院への入院保証や施設入居時の保証人、万が一の際のサポートなどを行っており、一人暮らしの方や高齢者にとって頼りになる存在です。このように孤独死のリスクに不安を感じる方でも、生前から支援を受けられる仕組みが整っています。
